2週間ほど前(8月初め)になりますが、埼玉県にある夢・建築工房さんを訪問させて頂きました。
住宅業界では非常に有名な工務店さんで、以前から私も訪問させて頂きたいと思っていた会社さんです。
高性能な家が注目される以前から取り組まれていて岸野社長は現在、新住協の理事もされています。
夢建築工房さんは高性能な家を設計するだけでなく、細かい部分まで配慮された納まりなどその施工精度の高さでも定評があり、実際に施工の納まりなどを紹介した本も出されています。
そんな全国的にも有名でスーパー工務店と言われるような会社さんに訪問できる機会は本当にありがたく、実際に訪問して最高の刺激を頂きました。
関西の工務店さん6社で訪問させて頂きましたが、夢建築工房さん設計部の事務所でこんな景色を見ながら、いきなり建築のマニアックな質問や話を2時間ほど交わしてから、現在取り組まれている現場の案内をして下さいました。
事務所隣の平屋モデル棟では現場の環境で検証されているのが非常に興味深かったです。
小屋裏エアコンの状況に近い環境で屋根の防湿気密シートの違いによってどのような現象が起きるのかを実際に検証されていますが、これは真剣に家づくりに取り組まれていて、その環境データまで取った上でお客様にお話しされようとする姿勢がよくわかります。
実際に見たことも確認してもいない事を話す会社や人とでは説得力や信憑性が大きく違います。
モデル棟で衝撃を受けた後、酷暑のなか外に出て現場に向かいました。
まずは事務所から車で数分のところにある4年ほど前に建築された高性能な賃貸住宅を訪問。
賃貸住宅にもかかわらず、樹脂サッシや付加断熱を行い、HEAT20のG2グレード以上の断熱性能というスペックだけでなく、外壁が板張りで造園は荻野寿也景観設計さんに依頼されていて、庭の緑も楽しめる素晴らしい住環境です。
内装も無垢床材や紙クロスなど自然素材を多用された注文住宅と同等の仕様は、住む人にとっての心地良さや快適さを追求した賃貸住宅でした。
特に感心したのは防音に対する考え方でこれでもかと言うほどの防音対策を行われていることで、入居者の方から音に対するクレームが全くないそうです。
また、転勤で退去される方が次の入居者を紹介されたり、入居期間中に一度も暖房する必要がなかったりと言ったエピソードも聞かせて頂きました。
住環境を考える際に一戸建てはようやく高性能化が推進されるようになりましたが、賃貸住宅はまだまだ性能の低い家がほとんどです。
収益性だけを考えると建築コストを少しでも抑える方向になってしまいますが、空き家や人口減少を考えると住み心地の良い住宅を建てる事が入居率を高める一つの手段となるのではと思います。
私もそんな高性能賃貸住宅を建てるのが目標となりました。
次はすぐ近くで同じオーナーさんの依頼で建築中の戸建て賃貸住宅に。
こちらも超高性能な賃貸住宅で計画されていて、注文住宅と同様に丁寧な施工現場でした。
同じオーナーさんが依頼されると言う事はこの高性能賃貸の良さを実感されていて、夢建築工房さんの提案力や施工力も評価されているからだと思います。
ここではメンテナンスについての考え方が大変勉強になりました。
特に第一種熱交換型換気システムのフィルター掃除に対する工夫はさすがとしか言いようがなく、ぜひ取り入れようと思います。
続いてこれまた近くにあるコンセプトモデルハウスをご案内頂きました。
このモデルハウスは3年ほど前に建築されましたが、断熱等級7の性能で夏用と冬用のエアコン1台で家全体の冷暖房が可能な住宅です。
この住宅では2階からのエアコン冷房を1階までしっかりと行き渡らせる工夫が目から鱗でした。こういう考え方もあるのかとこれからの提案の幅が広がりそうです。
モデルハウスとは言え決して特別な仕様で建てられた家ではなく、普段の家づくりを踏襲しつつ、高性能な家を体感して頂く場として建てられて、近々販売をされるそうです。
ここまでの内容でも非常に濃かったのですが、さらに有名な設計事務所とのコラボ案件の住宅の見学に。
設計事務所さんならではのデザインはもちろん素晴らしかったですが、特に階段や絶妙な天井高さ、高低差を使った空間構成は本当に見事でした。
こちらの住宅の施主様が設計事務所さんに依頼する際に工務店は夢建築工房さんでと指名をされたそうです。
これはその施工力をご存知でこの地域での知名度の高さや長く良い家づくりを行っている証と言えます。
施工する立場からすると非常に難しい納まりや仕上げでしたが、それを難なく施工できる技術力はさすがでした。
最後は現在、最も注目の高性能な買取再販リノベーション物件でした。
こちらは40年以上前に開発されたニュータウンの一角にあり、築40ほどの住宅を性能向上リノベーションして高性能な家に生まれ変わらせています。
ただリノベーションした住宅を販売するだけではなく、このニュータウンを活性化させる為の活動を町ぐるみで行政も積極的に行っている点が素晴らしかったです。
この住宅だけでなく、他の区画でもリノベーション計画が進んでいて、木の外壁や庭が綺麗な街並みになればと言う思いを持って取り組まれている姿勢には本当に憧れます。
これらの現場は全て事務所から30分以内の場所にあり、地元に密着されていて評判の工務店だからこそのシェアだと思います。
翌日は会社の取り組みや実際に使われている設計や施工の資料を見せて頂きながら解説して下さいました。
長い目で見た時のメンテナンスやリフォームのしやすさを真剣に考えられている点が非常に勉強になりました。
さらには解体時のことまで考えて、素材選びや納まりを考えられている点については普段の家づくりを見直す良い機会にもなります。
特に断熱材や通気層、防湿気密材の構成は一緒に伺ったメンバーと根ほり葉ほりお聞きする事ができて、本当に勉強になりました。
一般の方が聞くとマニアの会話にしか聞こえないレベルの内容で建築の設計から施工まで現場の事を詳しく知っている人しかわからない話です。
こんな話は本当に詳しい人としか出来ないため、久しぶりに夢中になって質問をしたり、話ができることが楽しく、時間があっと言う間に過ぎていきました。
・透湿防水シートの耐久性や防水気密テープの粘着力
・基礎断熱と床下断熱の考え方
・付加断熱をしっかり行って熱橋を少なくした場合には床下エアコンにしなくても十分に快適な環境が作れること
・2階からの冷房を効率よく1階まで効かせるためにエアコンの配置や空気循環の考え方
私も提案に取り入れている個室の冷暖房(特に冷房)を効かせる為の空気循環の考え方は似ている部分もあり、間違っていないことの裏付けにもなりました。
・コストバランスを考えて簡単な納まりにしたり、仕上げの素材を統一する
・設計や施工のルールの決め方が非常に合理的で理にかなっている
など他にもたくさんの知見を頂き、本当に濃い内容の研修となりました。
最後は設計の社員さんも交えて昼食を御馳走して下さいました。
その際のお話で社員さんが夢建築工房さんで仕事をすることに誇りを持っていること。
何より前向きに楽しく仕事をされていて、自分たちで考えながら少しでも良い仕事をしようという姿勢が伝わってきました。
夢・建築工房さんの取り組みは本当にすごいのですが、それ以上に資料やその中身、さらには質問にまで惜しみなく丁寧に答えて下さる岸野社長の度量の広さには頭が下がります。
今回、学んだ事を今後の家づくりや取り組みに反映していきたいと思います。